ドレフュス事件の中心人物は?『オフィサー・アンド・スパイ』(2021)
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
公開当時86歳のロマン・ポランスキー監督へのリスペクトを込めて、観に来ました。『オフィサー・アンド・スパイ』。2019年の作品なんですね。
私はナスターシャ・キンスキーを起用した『テス』(1979)という作品が好きで、監督は美女、美少女との縁が深そうです。と言いながら、今回は男祭りです。
『オフィサー・アンド・スパイ』へのひと言
先日も『トップガン マーヴェリック』で主役、脇役の話をしたところですが、大きな誤解がありました。
ドレフュスは主役じゃないよ!
ドレフュスが巨大権力と戦う話かと思ったら、まあ、戦ってはいるけれども、投獄されているので戦い方が限定的です。
はい、主人公は別におりまして、これはポスターのビジュアルだけでは分からないようになっています。
ここにもまたデジタルとのずれ
デジタルの生活となった私たちには想像しづらくなりましたが、いわゆる「物的証拠」が何か、というのが時代によって異なります。
撮影や録画ができるスマホが当たり前 → メールやデジタルカメラが当たり前 → ファックスや使い切りカメラが当たり前 → 固定電話やフィルムカメラが当たり前 → 手紙と電報が当たり前、とたどっていく必要がある。
そして、この物的証拠があまり変わっていないことは、同じフランス映画の『太陽がいっぱい』(1960)でも分かります。ぜひチェックを。
このような歴史物を楽しむには、観客側の想像力が必要になってきたなと感じます。
赤いパンツ姿の男、男、男!
この作品、お金がかかったなぁと思うのが、歴史的考察の部分、特に軍服です。
でも、フランスの軍服はチャーミングですね。パンツ(ズボン)が赤ですから。日本人だったら照れちゃいそうです。
イギリスではバッキンガム宮殿の傭兵のように、上が赤、下が黒など、各国様々です。
劇中無数に出てくる軍服男性の、衣装を見る楽しみもありますね。あと、口ひげ率も高いです。
男性中心の世界、島流しにされたり僻地に左遷されたりと、「辱める」というワークカルチャーもあります。軍人として愛国心は全員が持っていますが、自分のプライドと相手のプライドが戦う、そんな感じです。
何をハッピーエンドとするか?
実はこの作品、ポール・ハリス氏(アメリカ)の小説「An Officer and A Spy」を原作としていますが、フランスでのタイトルは「J’Accuse」(「私は告発する」の意)です。
劇中に出てくる、新聞の一面なのですが、もちろんこれは物語の転換点の一つに過ぎません。ハリウッド映画であればここで終わってスッキリ!な気もしますが…。
ドレフュスの冤罪、ということは観客は知っています。しかし、ドレフュスが善で彼以外は全員敵か、というとそうでもなく、それがこの映画を面白いものにしています。
深読みするならば、ポランスキー監督は、1890年代つまり100年以上前の出来事を用いて、現代を風刺していると言えます。
しかし、現代は「正義はひとつ」「真実はひとつ」という世の中でもなく、それは観客がよく分かっています。歴史的な結末というのはあった上で、それをどう観客が解釈するかの、自由度が高いです。じわじわ来る、いい作品。
そしてもう一度言いますが、ベテラン監督が86歳で発表した作品、本当に頭が下がります。ポランスキー監督、ありがとうございます!