三丁目の夕日とほぼ同時代も、ほのぼの少なめ『ベルファスト』(2021)

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

映画に通い出すと、予告編から「次はこれ」と習慣化してしまうのが常ですが、その中で見てみようと思ったのが『ベルファスト』(2021)。ケネス・ブラナー監督の自伝的作品と言われています。

「白黒の作品は流行らない」というのが通説ですが、ケネス・ブラナーなら見る!というファンも多くいると想像します。

ベルファスト』へのひと言

ジュディ・デンチが、ワンシーンで締めくくる。

『ベルファスト』ってどんな映画?と聞かれた時、「ジュディ・デンチの映画」と答えてしまいそうなくらい、存在感のある大物女優。そしてブラナー作品でもお馴染みです。調べたら、ブラナー監督と同じくジュディ・デンチも叙勲を受けていました。

終盤のデンチのクロースアップは、もう迫力ありすぎて全部持ってかれます。小皺の一つ一つに、時間が刻まれているというか。ぜひ劇場でご覧ください。

宣伝ビジュアルにも登場する9歳の少年、「バディ」は、ぱっと見『リトル・ダンサー』(2000)。

そしてバディの父親役、母親役どちらもモデル兼業の俳優さんなので、まあ美しいこと。父親のジェイミー・ドーナン、どこかで見たことあると思ったら、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)だ! 彼はブラナー監督と同じ、北アイルランド出身です。そして母親はカトリーナ・バルフはアイルランド出身(別の国)で、どことなくジャクリーン・ケネディに似た気品を感じます。

他、キャストがしっかり固められているからこそ、ジュディ・デンチの大御所感が際立っていると言えましょう。

子役ジュード・ヒルの好演

子役のジュード・ヒルは、クレジットでも最後に “Introducing Jude Hill” (そしてお披露目の、ジュード・ヒル)と出て、この作品の主役ではないとしてもアイコンです。これだけの大御所キャストと張り合い演じたことを讃えたい。

いろいろな子役がいますが、彼はとてもナチュラルで、声変わり前のピュアな少年を好演。子役はどうしても演技している感の方が後味に残ってしまうので、それがなかったことが驚き。

ノミネートと受賞のちがい

この作品のワールド・プレミアは、トロント映画祭で、観客賞を受賞します。その後、本国では英国インディペンデント映画賞、アメリカではゴールデングローブ賞、アカデミー賞の各部門にノミネート(受賞候補)となりますが、実際受賞したのはゴールデングローブ賞脚本賞、アカデミー賞脚本賞でした。

物語も演技も素晴らしい。あのケネス・ブラナー監督の自伝的作品、となればさらに関心も湧きます。ただ、私にとってそこを超えた驚きはなく、予想の範囲内の良作だったな、というのが率直なところ。もちろん観客の好みなので、ヒューマンドラマが好きな人もいれば、それだけでは物足りないと思う人もいるでしょう。

でもね、日本公開された2022年には世界で戦争が始まっていたという文脈で読むと、いろいろ考えさせられます。住み慣れた場所で暮らしたいこと。住宅街で紛争があること。家族で移住を考えること。9歳で移住すること。望む、望まないは別として、こうやって人が移動することで、世界は今のように作られてきたわけです。1969年は、それほど昔ではないから。

『ALWAYS 三丁目の夕日’64』と同じ年代ですが、日本が戦後平和を守ってきたことも、国内での紛争がなかったことも、私たちの考え方に大きく影響しているでしょう。

自伝的作品、早くない?

ケネス・ブラナー監督は1960年12月生まれなので、作品公開時60歳。

私は、映画監督がこれまでとは桁違いに小さい世界を自伝的に撮るのは晩年、というイメージを持っていました。黒澤明監督が80歳で『夢』(1990)『八月の狂詩曲』(1991)を発表したように、です。

それに比べると、ブラナー監督はまだ還暦のバリバリ現役、振り返るには早くない?と感じましたが、住宅の並ぶ一本の通りに彼の幼少期を詰め込んだ、そんな感じがしました。

もちろんフランソワ・トリュフォー監督やレオス・カラックス監督のような自伝的作品を作る人もいますから、一括りにはできませんが…。

シェイクスピア故郷での最近の1枚。お二人ともシェイクスピア作品とご縁が深いですよね。歴史物が若干苦手な私でも、シェイクスピア作品のように原作を繰り返し翻案して楽しめるものは、ぜひ観たいです。

ケネス・ブラナー監督(出演も)作品の重厚さが、大好きだ!

映画公式サイト:https://belfast-movie.com/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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