メロドラマだった『青春18×2 君へと続く道』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
情報なしで観に行きました、『青春18×2 君へと続く道』。思春期の主人公が好きで、台湾映画も好きなので、頭の中は『青春神話』(1992、ツァイ・ミンリャン監督)がグルグル回っています。夜の生ぬるい空気の中、バイクで街中を走る感じ。
それを求めて行った私は、結果的には大まちがいでした。
『青春18×2 君へと続く道』へのひと言
台湾の人のピュアさ満載。
この作品に似ていると思ったのは、『冷静と情熱の間』。男と女のすれ違い、というテーマですが、男性の引きずり具合が女性と比べると理解を超えます。
18×2の意味するところ、想像できますよね。18歳が2人とも取れるし、18歳の体験から2倍の36歳で振り返る、とも取れます。台湾人ジミーと日本人アミの恋物語。
ジミーを演じたシュー・グァンハンさんは、ジェントルマンで、星野源さん、もしくはKevin’s English Roomのケヴィンさんのような風貌です。
一方、アミを演じた清原果耶さんは、台湾人にモテモテの愛らしいお顔。自分で可愛いことを知っていて、思わせぶりなところがある。女性目線で見ると、少し距離を置きたくなる役柄です。
また、私からするとアミが現地の言葉をほとんど覚えようとしなかったのは、不自然。ジミーが頑張って日本語を覚えようとする姿が健気だし、お上手なのですが、アミが言葉の上でもアドバンテージを取りまくる、翻弄キャラに見えてしまいます。
スクリーンでそういう違和感を持ちながら映画はラストを迎え、気づいたら両脇の女性がすすり泣いているのを見て、自分の冷め加減にもため息。
エンドクレジットまで見て、張震(チャン・チェン)がエグゼクティブプロデューサーだったと知って、驚き。『ブエノスアイレス』の頃から25年経ち、売れるものに投資する才があるなと思いました。それか、張震もピュアなハートの持ち主か。
観客は自分の青春を振り返る
本作で、岩井俊二監督の『Love Letter』(1995)が出てきます。素晴らしい作品で、台湾でもヒットしたそう。また、主題歌「記憶の旅人」を提供したMr.Childrenも1990年代から現在まで人気のバンド。
『Love Letter』は台湾で1999年に公開されていますが、作品ではジミーとアミが出会ったのが2006年。いわゆる旧作で映画館で観たと思われますが、当時18歳だとして、1988年生まれ。物心ついた時には生活の一部にMr.Childrenがあったということですね。
この映画を日本の時間軸に合わせると、1990年代は私のようなアラフィフ中年も大学生だった頃。そうすると、青春期から30年を経ている人、実際には40代後半から50代後半くらいの人にまで刺さりそうな気がします。「青春18×3」ですね。
ジャンルとしては青春映画の要素があり、瑞々しい主演のお二人の若さで十分力を発揮している作品。観客も自分の青春と重ねますから、普遍的な作用があるように思います。また、18歳から36歳まで演じ分けたシュー・グァンハンさんは見事でした。
『新聞記者』との比較
これで終わってはいけないと、藤井道人監督の過去作品を拝見することに。公開当時見逃してしまった『新聞記者』(2019)をセレクトしました。松坂桃李さんもシム・ウンギョンさんもよかったし、国会議事堂前の交差点が頻出するロケもよかった。この作品で日本アカデミー賞を受賞されており、社会派の印象があるのかもしれませんね。
『青春18×2』はジミー・ライ氏の紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』が原作となっています。『新聞記者』も原作がありましたので、藤井監督は、ジャンルにとらわれない挑戦をされたのかもしれませんね。
『青春18×2 君へと続く道』公式サイト:https://happinet-phantom.com/seishun18x2