空気を摺り分けた色の魔術師… 吉田博展(3月28日まで、上野)
久しぶりの上野公園、オープンエアーでたくさんの方がお散歩してました。
こんにちは、Junkoです!
「事前予約不要」とのことで土日に向かった、吉田博展。午前に着き、待ち時間ゼロで快適に見ることができました。所要時間は、私の場合ギフトショップも入れて90分。
どんな方に見てほしいかを、書いてみました。
世界を旅した方
吉田先生は、芸術を学ぶにはフランスに行くのがメジャーだった時代に、自費でアメリカに渡り、成功した方です。そのため作品にはアメリカの自然を描いたものから始まり、ヨーロッパ、そして日本各地、アジアと渡っていきます。
世界を旅した方は、その国の空の色、太陽の色味、空気感(湿度)を肌で感じているでしょう。
アメリカの山々、例えばグランドキャニオンなどは、「ちょっとピンクの空」をイメージしませんか?(下は写真)
それに比べて、スイスのマッターホルン、やはり澄んだブルーが基調です。(下は写真)
グランドキャニオンとマッターホルンは、どちらも吉田先生の木版画にあるのですが、対照的に描かれています。もちろん、日本の山々も。
そして吉田先生は、朝バージョン、昼バージョン、夜バージョンなどを同じ木版で作ってしまうのだから、スゴいです。
人生半ばから何かにチャレンジしたい方
吉田先生は、もちろん売れっ子だったのですが、木版画を始めたのは49歳なのです。
明治生まれ(1876年)の吉田先生。明治時代の男性平均寿命は43歳前後。73歳で亡くなった1950年も、平均寿命は55歳くらいでした。今より平均寿命が短かった時代に、49歳で新しいことにトライするって…!
2021年の基準で考えても、49歳で新たなことにトライできるって、素晴らしい。同時に、まったく新しいことというよりは、これまで極めてきたことを土台にし、アレンジし、統合し、進化させ、という形で独自のポジションにたどり着いた方と言えるかと。木版画は彫り師、摺り師との共同作業と言いますから、細部までディレクションしたという吉田先生のこだわりようが伝わってきます。
ですから土台が重要という前提で、「もう〇歳だから」ということを理由にせず、新たな機会を求められる人生が素敵ですね。元気をもらった気がします。
反骨精神旺盛な方
これ、かの葛飾北斎先生にも思ったことなのですが、生き方そのものが「ロック」なんですよ。
人と同じはいやだ! 群れるのキライ! 完璧を求めて何が悪い? 何歳からもチャレンジ! そんなエピソードが満載の吉田先生です。
もちろん、実力が伴わないといけないですね。
吉田先生のスケッチブックを見ると、美しい風景の数々。スマホはおろか、カメラもない時代ですよ。行って描く現場主義で、これだと思う瞬間が来るまで何日も待つようなことがあったそうです。フットワーク軽く、健脚であらゆる場所を旅して、そして描き写した景色を木版画に残した、そんな素晴らしい人生を送られたと思います。
(おまけ)キュレーションお見事!
私もこの展示がなければ吉田先生のことを知ることはなかったのですが、こうやって日本より海外で知られている芸術家を紹介してくださったことに、とても感謝しています。
版画の隅には明治何年と記述があるし、マッターホルンも「マタホルン山」って書いてあるし、先生は「よし田」ってサインしてるし、ツボにはまります。
そして、会期の前半と後半で一部の画が変わるところも、心憎い!! 前半で気に入ったら、後半も行ってしまいますよね。ビジネスセンスも光っていると思います。
世界各地の空気感を切り取って木版画で残してくださった吉田先生が好きだ! TOBIを含め、このタイミングで紹介してくれた主催者が好きだ!