オバマ前大統領から「2020年卒の皆さん、おめでとう」

第44代米国大統領のオバマ氏。政治家よりも学者的ではないかと批判されたこともありましたが、私はとても好きでした。もちろん初めての非白人大統領、本土でなくハワイ生まれでイスラム教の「フセイン」という名を持つという、多様性を内包した存在もそうですし、スピーチが抜群にうまいということもありました。

大統領は2009年から2017年までの8年任期でしたが、2014年に妻ミシェル氏と、オバマ・ファンデーションというNPOを立ち上げています。大学の奨学金制度なども設けています。オバマ氏はこの投稿の時点で58歳という若さで、まだまだ現役。日本の政治家で、引退後に未来の教育や人材育成に情熱を注げるだろうかと考えると、このような活動を展開するオバマ氏にはシンパシーを感じずにいられません。

そして5月と言えば、アメリカでは卒業式シーズン。ファンデーションでは、ハッシュタグ #ClassOf2020とともに、オバマ氏のスピーチ動画を公開しました。こちらは1分34秒バージョンで、長い方は最後にリンクを付けておきます。

「プロム(ダンスパーティ)、シニアナイト(ホームでの引退試合)、卒業式、いくつものパーティー(つまりはバカ騒ぎ)を楽しみにしていたよね」と共感しつつ、“the world is turned up side down by a global pandemic.”(グローバル規模の感染症流行によって、世界はひっくり返されてしまった)

Photo by Juan Vargas from Pexels

そういった状況の中で、「これから皆さんは大人の仲間入りをする。人生のいろいろな決断に責任を持つこと… 自分にとって何が大切かを決めたり… どんなキャリアを歩みたいか考えたり… 誰と家庭を築いていきたいか… どんな価値観を持っていたいか…」こんな世の中で決断していくことは、scary(怖い)かもしれないけれど、inspiring(刺激的)でもあってほしいと思う、そうオバマ氏は語ります。

不確実な世界だからこそ、これまでやってきたことは通用しなくなる時代だからこそ、あなたたちが世界をシェイプ(形作る)していくのですよ、と。

やっぱり先生タイプというか、モチベートするのが上手だなー、と思いました。米国大統領まで務めた方が、高校卒業を迎える人たちに向けて発信したことは、スケールの大きさを感じますし、とてもインパクトがあったと思います。もちろん、投票できるのも18歳からですから、責任をもって代表者を選ぶという意味もあるのだと推察します。

Photo by Andrea Piacquadio from Pexels

日本では卒業式は3月ですが、動画を検索したところ、学長が学生に向けて、自治体の首長が生徒・児童に向けて、祝辞を述べたものはありました。オバマさんがご自身の居住地や母校の高校生だけに向けて発信したとしたら、それはとてもつまらない。やはり見ている範囲がちがいます。

今回のパンデミックにおいても、何人かの女性首相が子どもたちに語りかけたことが、話題になりました。そう、子どもも社会の大切な構成員、疑問を持ったり説明を求めたりしている人たち、未来を担う世代。そのようなグループに語りかけよう、コミュニケーションを取ろうと思うリーダーは、視座が高いと思うのです。

ロング・バージョンはこちらからどうぞ。最後、3つのアドバイスで締めくくられます。
1. Don’t be afraid. 恐れないこと。アメリカは戦争や大恐慌などを経験しているが、その都度必ず過去から学び、強くなっていけるから。
2. Do what you think is right. 正しいと思ったことをしよう。正直、勤勉、尊敬…長く続く価値観に自分自身を置くこと。
3. Build a community. 仲間を見つけよう。大きなことは1人では成し遂げられない。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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