トリアーのノルウェー映画『テルマ』

大好きなラース・フォン・トリアー監督は、私の信頼する監督のベスト10、いやベスト5に入るかもしれない。クレイジーな作品を作る。

今回、トリアーという所だけを信じて観に行った、彼の甥っ子さん(同世代!)のヨアキム・トリアー監督。デンマーク生まれ、ノルウェーが生活の拠点らしい。2017年の『テルマ』だ。

これから見られる方のために、もちろん結末は言えないが、私がいいなと思った点をお伝えしたい。

◆画面が暗くていい!

ここは北欧だった、と意識させられるほどに、外も暗ければ、家の中も暗い。空がどんよりしていて、鳥の群れが不愉快に舞う。日本のコンビニレベルの明るさに慣れた目からは、居間もベッドルームも何これ!という暗さ。うっそうとした空気感が、おどろおどろしい作品の雰囲気に貢献している。

◆女の子がいい!

主人公のテルマは子役から活躍する女優さんとのことだが、美女というよりはわりとどこにでもいる普通の女の子感があり、好感が持てる。テルマが大学で知り合うアンニャは目鼻立ちがはっきりしていて、妖艶。誰かに似てると思って記憶を辿ったら、『ヘンリー&ジューン』(1990)だった。大きな目のマリア・デ・メデイロスと、人間離れしたユマ・サーマンを足して二で割った感じが、今回のカヤ・ウィルキンスだろうか。

◆争いがないのがいい!

この映画はホラーかと思ったら、オカルトかな?人と人が争ったり、傷つけ合ったりするようなものではない。極めて平和な日常の中に、何かを見つけたり、鳥が鳴いたり、目が合ったりした時の、静かな恐ろしさ。「苦しい」「熱い」「悲しい」など様々な感情を見ている者と共有し、画面の空気感で恐怖に包みこむ、上級で上質な作品。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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