やり直さない人生、『ヤンヤン 夏の想い出』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

2026年、おめでとうございます。今年も週一で、レビューをお届けしていきます。

今日は、年末に観た2000年の作品、『ヤンヤン 夏の想い出』(エドワード・ヤン監督)。私のライフタイム・ベスト10に入れていたのですが、おそらく十数年の時を経て、再度鑑賞する機会に恵まれました。

『ヤンヤン 夏の想い出』へのひと言

人生は、ビタースウィート。

本作は、日本語のタイトルから受ける印象だけで言えば、「子ども映画」のようです。ヤンヤン(8歳)が夏休みに田舎へ行って、おばあちゃんと過ごして、何か成長を感じさせるような体験をする、的な。

けれど実際の『ヤンヤン』を観ると明らかなように、ヤンヤン自身は脇役に近い存在で、大人や中高生の人生におけるあらゆる感情を描いた群像劇。もちろんヤンヤンの佇まいは可愛らしく、ホッと一息つける存在です。

エドワード・ヤン監督は社会批評的な文脈で語られることが多いけれども、『ヤンヤン』では都会の人間に注目し、完璧な人などいないことを突きつけてくる。誰も聖人ではないし、幸せを満喫している人は出てこない。弱く、妬み、ずるく、勝ちたがり、迷い続ける。時に愚かなことをする。おばあちゃんは、昏睡状態に。だからこそ、人間らしい

人生は一度きり

中年にもなると、学生(中高生や大学生)時代の恋人と再会することもあります。

そして、「やり直し」したい人だっている。

ヤンヤンの父親、NJが実質の主人公ですが、演じたのがウー・ネンツィン(呉念真)さん。脚本家として有名な方のようです。彼は親戚の結婚式で偶然、学生時代の恋人と再会し、日本出張中に会うことになり…。

画面左上、オーシャンビューのレストランで食事する二人。

2002年に閉館した、熱海のつるやホテル

不倫とまで行きませんが、居住地以外の海外で、既婚者の二人が食事をするだけで、十分訳ありです。

思い出はいつまでもきれいなままだけど、女性がNJに詰め寄る瞬間も。人間って、20数年も思いを溜め込める生き物なんですね。NJも、そしてヤン監督も、「一度の人生で十分」と思っているのでは。

そしてその一度きりの人生が、それぞれ山あり谷ありなのです。ぜひ本編でお楽しみください。

エドワード・ヤン監督は59歳で亡くなってしまったのですが、『ヤンヤン』を発表した50代前半の監督の年齢に、追いついた中年の私。

人生はやり直せないし、たぶん、やり直さないほうがいい。監督の視点に、やっと追いつけた気がします。

シネマトグラフィーの美しさ

ここは、評論しがいがあるところだとは思うのだけど、いくつか印象に残るシーンがありました。

住まうアパートのエントランスで、高校生の男女が会話する様子を、まるで傍観するかのような、ロングショット。

日本の新幹線の移動中、被写体をガラスの反射から写したシーン。少年と少女が大人になり、二人で肩を並べる瞬間。その後、熱海のホテルからの眺めは、まるで泣いているような雨。

気になる女の子は、プラネタリウムでシルエットに見える存在。つかみどころがありません。

どれも本当に印象的。撮影は、ヤン・ウェイハンさん。ホウ・シャウシェン監督の『台北ストーリー』(1985)も撮っていました。

ヤンヤンの今

ヤンヤンを演じたのは、当時9歳のジョナサン・チャン(張洋洋)さんです。今でも面影があるので、こちらをどうぞ!

ヤンヤンがフィルムカメラを持って、撮りまくる姿、可愛いですよね。「自分が見られないところを撮る」って、哲学的な匂いもします。

『カップルズ』が改めてプリントで見られたのも2025年でした。テクノロジーの進化はともかく、人間が全然変わっていないことだけが、よく分かりました。

今日はこの辺で。

映画公式サイト:https://yi-yi.jp/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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