大人になりきれないから、子どものままでいる―『ナミビアの砂漠』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
2024年作品『ナミビアの砂漠』(山中瑶子監督)がAmazon Primeで公開されています。Bunkamuraル・シネマで公開当時、予告編も好きになれず、オーディエンス・レビューも3点台で、足を運んでいませんでした。
2024年カンヌ映画祭では、FIPRESCI賞を受賞されたとのことです。
『ナミビアの砂漠』へのひと言
みんな、子どもに戻りたい。
主人公カナは21歳。脱毛サロン店員という職業からも、仕事への関心や向上心はあまり感じられません。
そして2人の彼氏のあいだを行き来しますが、どちらにも言いたい放題、やりたい放題。正直、主人公へ感情移入できない時間が続きます。どちらの彼氏も、彼女を丸ごと受け入れることができる、心の広い男性に見えました。
そうやって甘えながら、毒を吐きながら、自分を正当化するカナ。そして本作品では、妊娠や中絶もテーマの一つですが、「親になる」ことに象徴されるような、大人としての責任について、モーレツに反発しているカナがいます。
彼女は根源的には、居場所を見つけたい。ただ、今は宙ぶらりんで、根無し草で、どうしたらよいかも分からないのです。そんな弱い彼女だからこそ、さらけ出すところを愛しいと思う人もいるし、助けてくれる人が現れるという見方も、あるでしょう。
子どもっぽい大人、河合優実
この感情移入を難しくさせていた主人公が、河合優実(かわいゆうみ)さん。特に彼女の身体性において、子ども以上大人未満な感じがよく出ている。小顔ですらっとした足で、世が羨むスタイルだが、カナの手足の長さが画面の中で際立ち、街の雑踏で見た時にもまるでマリオネットのような、どこか不思議なリズムを刻んでいる。大人の世界にうまく収まりきれない若さ、発達段階にあるカナが、そのシルエットから自然と滲み出ていたように思います。見たくて見ているわけでなくても、目がつい追ってしまう感じです。
『ナミビアの砂漠』が扱うテーマは、若者の不安定さや、親子関係など、一定の社会性がありました。それをカナと周辺の人を通じて、もっと生々しく、パーソナルに物語にしたように思います。誰もがふと、「甘えたい、子どもの自分になりたい、そのままを受け入れられたい」と思う感覚。作品はオープンエンディングで、結末は明確ではありませんが、カナの存在に私たちも振り回され、また突き放したり突き放されたり、と心が動く作品であったと思います。
今日はこの辺で。
映画公式サイト:https://happinet-phantom.com/namibia-movie/#top_wrapper
河合優実さん出演の、可愛らしい作品『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』。