覚醒のための飲酒、『アナザーラウンド』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
本日も旧作となります。マッツ・ミケルセンが高校教師を演じる2020年の作品、『アナザーラウンド』(トマス・ヴィンターベア監督)。デンマークの映画で、アカデミー賞国際長編映画賞も取りました。
『アナザーラウンド』へのひと言
誰でも、覚醒したい。
人間の欲って、際限ないものですね。人よりキレイになりたい、もっとお金持ちになりたい、仕事で成功したい。
中年の危機(ミッドライフクライシス)も、誰でもあります。私の人生、こんなもんじゃない。そして、2020年代であれば、瞑想に勤しんだりするわけです。
本作では、お酒の力を借りる。白色人種だとアルコール分解はアジア人種より強いのだと想像するので、ランチのビール1杯くらいは問題ないのでしょう。でも、教員が勤務時間中にアルコールの力を借り、「血中アルコール濃度を0.05%に保つ」というのが、物語中のおかしな「実験」です。
予告編にある「ほろ酔い」は、適切な表現ですね。
普段の自分を認めたくない。自分ではない誰かになりたい。そんな人たちが、この魔法の薬ともなるアルコールを摂っていきます。
そんな出だしを見ると、プロット展開は想像がつきました。成功体験を積む。飲酒量が増える。アルコール中毒になる。そして、飲酒がバレる。誰かが命を落とすかもしれない。
人間の欲があらわになる様子を、ストーリーでは予測できました。監督がかつて「ドグマ95」という運動にラース・フォン・トリアー監督らとともに参加していて、自然光、手ブレカメラなどを多用していたことを聞いていたので、本作はそういった実験的要素が少ないと感じました。
緑のデンマーク、そしてカップル主体のデンマーク
本作は高校教師が主人公なので、通学の景色、自宅の間取り、よく行くレストラン、趣味で出かける場所など、「普通の人」が接するだろう場所が多く出てきます。
その中で印象的なのが、自然の美しさ。窓の外から見える庭がちょっとした森風の緑だったり、友人宅のベランダ先の一面が湖だったり、森の中でキャンプしたり。
北欧の人は、緑の中で自分を保つっていうことが分かっている気がします。ドイツもロシアもそうかな。私もその感覚を忘れないでいたいです。

そして、パートナーシップ。妻とうまくいっている人、会話が少ない人、尻に敷かれている人、いろいろです。家事に関わらない男性の評価はとても低いです。
マッツが演じるマーティンは、妻との関係が冷えてしまっています。彼女の夜勤も一つの原因ではあります。そんな時、日本だったら、男性は一人でいるでしょうか。お店に行くでしょうか。愛人を作るでしょうか。女性はどうでしょうか。
本作では、彼の妻の行動がデンマークらしいと思いました。詳しくは書きませんが、やはりパートナーシップ(2人でいること)が人生の基本なのだと感じずにはいられません。これもまた、人間らしいな。

この映画のラストシーンは名物のようで、ネット上にも動画が上げられています。ぜひ本編を最初からご覧になって、味わってくださいね。私自身がこの映画の格言をお伝えするならば、「どんなにヨレヨレでも、腹の出ていない中年はモテる」です。
今日はこの辺で。