あなたの一番尊敬する人は誰?
ワタクシ20歳で一度米国留学しているのですが、その時の体験から。
日本とはちがった、尊敬する人
とある授業の一番最初に、小グループで自己紹介することになった時を覚えています。 質問がいくつか用意されていて、その一つが「あなたの一番尊敬する人は誰?なぜ?」(Who do you respect the most?) でした。
え、どうしよう…。私にはなぜか「夏目漱石」が思い浮かびました。偉大なる作家だから。でも、アメリカ人には通じないな、どうしよう…。
次に、自分の大学の教授の顔が思い浮かびました。勉強する分野で知の巨匠みたいな方だったので、この人でいいかな、と。
そう考えているうちに、5-6人いたグループの自己紹介は始まっており、みんなの答えが一様だったのです。
「私が一番尊敬するのは、両親です。理由は私を育ててくれて、私らしくいられるよう見守ってくれたから」「私が一番尊敬するのは母です。自らの生き方をもっていろんなことを教えてくれたから」
何それ?? 家族って尊敬するものなの?偉人とか有名人を答えるんじゃないの?
結局私も同調圧力を感じ、「私の尊敬するのは両親です」みたいな答えをして、その場を切り抜けた記憶があります。
英語の表現あれこれ
英語の投稿サイトでは、どうやらこの質問だと「家族のメンバーや、個人的に影響を受けた人を答えることが暗に期待されている」という解釈も存在しました(原文はこちら)。
“Who do you admire?” 「あなたが称賛する人(惚れ惚れしちゃう人)は誰?」が質問なら、もう少し外部の人や、歴史上の人物でもOKとのこと。
“Who is your role model?”「あなたのロールモデルは誰?」が質問なら、大体現存の人で、自分が真似したいと思う人を答えるそうです。
Admire アドマイヤに関しては、私が好きな遊びで「シークレット・アドマイヤラー(Secret Admirer)」というのがあります。これは自分が担当する特定の人に、本人が気づかれないように、その人が喜びそうな様々な仕掛けをして楽しむものです。「あなたをこっそり応援する人」から、花束が贈られてきたり、入った部屋に小さな手紙が置いてあったり、なぜかランチが大盛りになっていたり。知らない人からアドマイヤされる、つまり「隠れファン」がいるのも、悪くないものです。この遊びは数日続くことがあり、最後には「私でした!」とネタ明かしをします。
女優が答える!尊敬する人物
Vanity Fair という、米国のファッション&カルチャー誌があります。Vanity FairのYouTubeチャンネルで、「あなたが一番尊敬する人は誰?」のインタビューを見つけました。
英語の字幕を出す場合は、歯車マークの「設定」で字幕を選んでください。
この中には、家族を選んだ人も、スーパースターを選んだ人もいて、面白いところです。このインタビュー集で多いのは、質問の文脈を読み取ってか、「この職業になるきっかけを作ってくれた人」への言及が多かったです。
翻訳の問題かも?
結局のところ、Who do you respect the most? という当初の質問を、「尊敬する人は誰?」と和訳したところが、トリッキーだったかもしれません。
リスペクトを英英類語辞典で調べると、”a feeling of great approval and liking” 「大きな賛同と好意の気持ち」ということなので、必ずしも「尊敬」ではないですね。SNSで「すごくイイネ」する時みたいな感じでしょうか。私の近くで、「すごくイイネ」的な存在の人という意味ならば、家族が入ってきてもおかしくないです。
もともと、謙遜の文化からか家族は褒めたり尊敬したりする対象ではないように教わってきたこともあります。でも、英語で「あなたの一番尊敬する人は誰?」と聞かれたら、一番身近な誰かを挙げるのも、ありでしょうね。