革命家が革命家になる前のおはなし…『モーターサイクル・ダイアリーズ』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
本日は旧作の『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004、ウォルター・サレス監督)。公開当時から、ロバート・レッドフォードが製作総指揮したことが話題でした。私の好きなガエル・ガルシア・ベルナルが主演しています。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』へのひと言
誰にでも、自己形成期がある。
チェ・ゲバラについての話だったことは知っていましたが、そもそもゲバラがアルゼンチン出身だったことすら、知りませんでした。え、キューバ人じゃないの?
本作は、エルネスト・ゲバラが医大生だった20代前半に、相棒アルベルト・グラナードとモーターバイクの放浪旅に出る内容です。ブエノスアイレス(アルゼンチン)を出発し、チリ、ペルーと続き、ベネズエラまで行きます。正直ごく普通の、強いて言えばバカ正直な青年が、この旅で目にしたものが、世界観を変えたというのが適切でしょうか。
まだ「革命家」ではなく、世界を見て、戸惑い、考え続けている途中の、どこにでもいる若者です。むしろちょっとお坊ちゃんだったかもしれません。
旅の途中、南米の歴史、とりわけ先住民(First Nations)が長い時間をかけて搾取され、沈黙を強いられてきた現実が、説明抜きで迫ってきます。
ここで描かれるゲバラの視点は、思想よりもまず「人」に向いている、ここがポイントです。
政治的主張を語る前に、同じ食事をし、同じ空気を吸い、同じ寒さに耐えながら時間を共にします。すごく人間らしいリーダーだな、と思えました。
鑑賞後、さらにWikipediaを読むと、来日経験もあるという事実に行き当たる。え、革命家じゃなくて政治家だったの?
とにかくあのウォーホル的なイラストの印象しかない人が、広島原爆資料館を訪れていたなんて、いきなり親近感が湧きました。
1950年代の話だから、男性中心社会については感じました。
暗い!影が多い!
この映画は、とにかく暗がりや影が多いです。
ガエル・ガルシア狙いで観に行った女性ファンの方を、さぞがっかりさせただろうと思うほど、主人公の顔がはっきり見えないカットが続きます。
これも極めて意図的だろうと思われるのは、設定が1952年。モーターサイクルもボロボロですが、本をロウソクの光や日の光で読んでいたりと、人間の暮らしが自然に近かった頃です。一日の半分は暗いし、貧しい人のお家ではなおさら暗い、納屋なんて暗い。
旅の中で映し出されるのは、極寒の土地、切り立つ山々。若い男性2人でも、吹雪や凍りつく水にはかないません。いわゆる「ヨーロッパへ卒業旅行」なんてお気軽さと、ちがいます。ゲバラが喘息持ちなのも、見ていてハラハラします。
「若さ」を切り取る映画
若さの素晴らしさは、文化を超えて認識されている気がしていて、映画でも若い主人公が多いですよね
ガエル・ガルシア・ベルナルはメキシコのスター俳優ですから、ゲバラを演じていることも、この作品を特別なものにしています。
私たちはブラッド・ピットを観て育った。レオナルド・ディカプリオを観て育った。そんな彼らも、父親役をやり、祖父役をやるようになります。ガエルもいまや40代後半ですが、この映画に収められているのは、まだ何者でもない、言葉にまとまる前の感情をまとった青年。
その時にしか撮れないガエルが、フィルムに焼き付いています。
この相棒だったアルベルトさんも撮影(ロケハン)にご一緒したようで、歴史や記憶と伴走できるような映像化を意識したことでしょう。そして、ゲバラが生きていれば、この作品を見てくれたかもしれないという、夢みたいな思い。ゲバラは、1967年、ボリビアでボリビア軍に捕まり、命を落としました。
革命家の話であれば、たいそうな展開が待っているかもしれない。でも、その10年以上前の話、誰もが通過する20代の話です。
その意味で、古さを感じませんでしたし、ゲバラに親近感を抱いた人も多かったのでは。
2025年、世界は揺れています。ベネズエラも動いています。
歴史の重さや深さを感じる一方で、平和な時代に生きる若者は、資本主義(金儲け)に飲まれている感じもありますね。日々の暮らしを心配しなくていい日本で、誰のために自分の時間や労力を費やせるか、考えたくなった1本でした。
ウォルター・サレス監督の作品も、追加で観てみたいです。
今日はこの辺で。