静かな演技を味わう、『教皇選挙』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

ローマ教皇の選挙なんて、密室劇ですから映画でなくても面白いに決まっています。『教皇選挙』(エドワード・ベルガー監督、2024)、今回も前情報なしで行きました。

『教皇選挙』へのひと言

静かな演技を楽しんでいる俳優陣。

主人公のラルフ・ファインズはすぐに分かったのですが、嬉しかったのがイザベラ・ロッセリーニです。シスターの長を演じていて、背中の肉などふっくらした高年女性の感が素晴らしかった。からだには何か巻きつけていたのかと思いますが、顔がきれいで、すぐにロッセリーニと分かりました。この男集団の中で重要なセリフも立ち回りもあります。

ほかにもスタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴーなど、大作でも記憶に残る役を務めてきた俳優らが、枢機卿として参加。会話は限定的です。足し算の演技は簡単で、引き算は熟練を要する。自分の発言や行動が次の投票に影響する、一挙一投足が重たい場所と空間。俳優として楽しいに違いない、それがすごく印象的でした。

演劇的なダイナミズム

今回は密室劇な分、人の感情の動きに焦点が置かれます。場所が固定されているので、その中で起きる些細なことに、人が反応する部分が面白いです。

ラルフ・ファインズ扮するローレンス枢機卿は、今回の選挙のまとめ役でもあり、教皇候補者でもあります。そのため自分の出世欲を疑われることもあり、アドバイスを乞いたいであろう先の教皇は他界していて叶わない。

カトリック教徒の頂点に立ちたいと意欲を見せる者。そのためには大衆受けするメッセージを出さなくては、と躍起になる者。聖職者として貧しい人と共にあり、こういったレースには興味ない者。さまざまです。

カトリックが抱える問題には、共に戦う必要があります。少年虐待などのスキャンダルに、世間は強く反応します。これ以上こういった問題を起こせないという認識も共通でしょう。

エンディングは、途中で想像できた結果でしたが、とても今っぽいと感じました。人に寄り添うからこそ、世論を吹っ飛ばして自分の目の前の人と対峙する。ここに人間力が求められますね。

https://twitter.com/ObjetivoLaSexta/status/1920569395723530431

静かで重厚感のある良作でした。

今日はこの辺で。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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