哲学的なファッションカタログ、『パルテノぺ ナポリの宝石』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

本日は、『パルテノぺ ナポリの宝石』(パオロ・ソレンティーノ監督の新作)です。まず「パルテノぺ」と覚えるのが難しかったです。「パルテノン」でもないし、「オノマトペ」でもないし。

映画を観終わってから知った事実としては、パルテノぺは古代ギリシャ神話に登場する セイレーン(見た目は人魚) につけられた名前だということ。そして、パルテノぺはオデュッセウスを誘惑できず、絶望して海に身を投げ、その遺体が流れ着いた場所が現在のナポリの起源だということです。

この前置きを知っているともう少し深みがあったかもしれませんが、時すでに遅し。たしかにパルテノぺは海から生まれていました。

パルテノぺ ナポリの宝石』へのひと言

街並みの美男美女スナップ。

戦後1950年に、ナポリで生まれたパルテノぺ。彼女が16になり、22になり、と成長するにつれ、多くの男性が彼女の美しさに見惚れてしまいます。同時に、1970年前後ですから、女性も大学に行き、学生運動があり、パルテノぺも賢さを発揮する。時代柄、タバコがめっちゃ出てきます。当時の「ファッション」でも「快楽」でもあり、どこか「退廃」を示す重要アイテム!

どこかで『君の名で僕を呼んで』を思わせる、日光浴のけだるさや、夏の昼や夜のそよ風が、似合う作品です。(『君の名で…』は1980年代が舞台でした。)

今回はサンローランが衣装芸術監督のアート・ディレクションを手がけ、主人公のパルテノぺを始め、街行く人々がみんなモデル体型です。ファッションショー、もしくはファッションカタログを見ているかのように、整った体にフィットした美しい服。パルテノぺはほぼ裸体の時もありますけれども… 彼女のあの毛量は、若さの象徴です。

馴染みがなかったのですが、ソレンティーノ監督の作品は映像美で知られているのだそう。海や島も美しく、登場人物も美しい。色という色が使われて、総合評価の高い作品でした。

観光都市ナポリ

どの国でも、都市と都市の言い争いというのは聞きますが、イタリアもナポリは田舎者なんて言われることともありますね。作品中も、ナポリに対する辛口コメントも聞かれ、耳を覆いたくなります。

実際は、本作によってナポリ観光経済が潤ったそうです(出典)。紀元前からあった都市ですが、映画のシーンと共にナポリを旅することも、思い出深いでしょう。この作品中はあまり食事のシーンがありませんが、食を楽しめる都市でもありますしね。

イタリア映画にアメリカ人役

そして忘れてはならないのが、ゲイリー・オールドマン。アメリカ人作家ジョン・チーヴァーが酒に溺れる様子を演じました。インテリに惹かれるパルテノぺを引き寄せたり突き放したりと、期待通りの演技。オールドマン自身もアルコール依存症だった過去があります。オールドマンはどうしてもこのソレンティーノ監督の作品に出たかったようで、こてこてイギリス人なのにアメリカ人役と、これもまたチグハグ感がいいですね。イザベラ・ロッセリーニ(ローマ出身)と付き合っていたこともあるくらいだから、イタリアには馴染みがあったかもしれません。

本作のミューズであるパルテノぺを演じるのが、セレステ・ダッラ・ポルタ。イタリアのセックスシンボルと言われたクラウディア・カルディナーレさんや、ソフィア・ローレンさんのような強い印象とも違い、セレステさんは屈託なく素直な感じです。太陽が似合う点は、共通しているかな。初主演と思えない、堂々とした演技。誰もが憧れ、惑わされるというパルテノぺを演じるにふさわしい逸材だったと思います。そして、美女がファム・ファタール的に男を惑わす安っぽい映画ではなく、観終わってもシーンと共に「生きるとは」「愛とは」と考えてしまうような、哲学的な映画と言えるでしょう。「美」も、人生の一つなのです。

現在Bunkamuraで上映されていますが、「Bunkamuraっぽい」と言ったらわかってもらえるでしょうか。映画を見ようか迷っている人は、どれほどきれいなお姉さんか見に行ってみよう、くらいな気軽さでもいいと思います。

他のキャストはあまり紹介されていなかったので、こちらで。

イザベラ・フェラーリ(女優志望のパルテノぺが向かう先の、謎の老婆)

シルヴィア・デグランディ(パルテノぺの母)

ルイザ・ラニエリ(ナポリを強烈に侮辱する女優)

ダリオ・アイタ(使用人の息子、サンドリーノ)

ダニエレ・リエンツォ(兄、ライモンド)

https://twitter.com/GettyVIP/status/1814859547380416876

今日はこの辺で。

映画公式サイト:https://gaga.ne.jp/parthenope

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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