リンチが家族愛?『ストレイト・ストーリー』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
デヴィッド・リンチ監督シリーズ、今回は1999年の『ストレイト・ストーリー』です。4Kリマスター版で公開されました。
『ストレイト・ストーリー』へのひと言
到底リンチとは思えない、家族もの。
この作品は、日本だったら文部科学省選定作品に十分選ばれるクオリティでした。ちなみに配給もディズニーでした。
え、でもデヴィッド・リンチですよね。狂気や逸脱を描くのが得意な。ですから、それを期待した観客は、途中退席してもいいくらいの内容です。
私は、リンチ監督もこういうほっこりものを作るんだ、家族のよさみたいな価値観を表現するんだと、安堵さえ覚えました。もちろんすでに壊れかけているような家族ではありますが。
アルヴィンを演じたリチャード・ファーンズワースは、かつての西部劇映画のスタントマン。名だたる俳優たちが共演を望んだようですが、こういった古株の人を引っ張り出してくる辺りも、飾らない作品、純度の高い作品を目指したことが伺えます。
何が「ストレイト」か
「ストレイト・ストーリー」と聞いたら、まっすぐなお話、と思い浮かぶでしょうか。
実は主人公の名がアルヴィン・ストレイトで、ストレイトは名字です。よって、「ストレイト・ストーリー」とは「ストレイト家の物語」でもあります。
日本語で表現するなら、「質素物語」で、主人公が質素さんみたいな感じ。
この名字を聞くと、アメリカでは「中西部の人かな」と思う確率も高いようです。東海岸から西を目指した先祖が、とうもろこしなどの農業で定住を決めた地域です。一攫千金などではなく、実直にコツコツと、物事を進めるタイプの人たちを描写しています。質素さんのイメージですね。
もう一歩踏み込むと、これは実話でした。メディア「Military.com」には、実際の写真も掲載されています(That Time a 73-Year-Old World War II Vet Drove 240 Miles on a Riding Mower)。リンチ作品としてはまっすぐ(ストレイト)すぎる、と皮肉りたくなりますが、本当に直球で家族について描いています。
この記事では240マイル(約390キロ、およそ東京−名古屋間)となっており、映画の中ではもう少し長い距離を走ったように描いているようです。気持ちが「まっすぐ」だとしても、芝刈り機でこの距離を移動するのはクレイジーですね。
中流階級の描写がピカイチ
リンチ監督は、ホワイトピープルを描かせたらお手のものです。『ツイン・ピークス』のローラ・パーマーを見ると、「そうそう、この感じ」と思います。
実はこのストレイト一家は、所得としてはやや低めかと思います。アルヴィンは着心地のいい(くたくたの)フランネルシャツを着て、娘のシシー・スペイセクは少し障害があるかもしれない知性と話し方。遠路はるばる訪ねる兄貴(ハリー・ディーン・スタントン)も、ヨレヨレです。その代わり、色々削ぎ落としてシンプルに生きている。
一方で、道中で会う人たちは、いわゆる2階建ての戸建てに住むファミリー。車を持ち、バーベキューを楽しんでいる。この人たちが典型的なアメリカンで、風貌や仕草、会話、思考回路までサイコーです。怪しいと思いつつ、手を差し伸べるやさしさもアメリカン。
ロードムービーって、主人公が旅をして変わっていくから面白いのに、本作は驚くほど変わらない。でもそれが、ストレイトだから、本質でもあります。
今日はこの辺で。
映画公式サイト:https://straightstory.jp/