宇宙人に優しくなれる人間たち──『カミング・ホーム』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです。

今回は、アメリカ映画『カミング・ホーム』(マーク・タートルトーブ監督)。宇宙人の話だと聞いて、面白そうだと思い足を運びました。

主演はベン・キングズレー、共演にハリエット・サンソム・ハリスジェーン・カーティンと、なんとも味わい深いベテランキャストが顔を揃えています。

カミング・ホーム』へのひと言

人間が、他者に親切になれる瞬間。

本作のユニークなところは、「宇宙人もの」という一見ありがちな設定に、「老い」を掛け合わせている点です。しかも主要登場人物は3人とも高齢者。少し偏屈で、毎日同じことを陳情しているような、ヒマ人。しかもアメリカの田舎に住む白人ですから、非白人に対して偏見の一つや二つもあるでしょう。

ところが、自宅の庭に降り立ったのが宇宙船、出てきたのが宇宙人、となるとどうでしょうか。主人公のミルトンはこの宇宙人に驚くほど丁寧。この宇宙人のために、通じないけどゆっくり話します(アメリカ人は通常それしないです!)。そして食べ物などのお世話をし、追手からも守ります。

人間と人間同士はケンカもするし憎み合ったりゴシップしたりするのに、宇宙人にはこんなにやさしくできるんですね。そして、人間には言えない愚痴や本音をポロッと漏らしたりもします。自分の娘や息子に対しての思い。それがコミカルでもあり、人生の苦さを感じたりもします。普段は忙しくてそんな本音が出なかったかもしれませんが、むしろ忙しく振る舞うことで本音を感じないようにしていたということもあるでしょう。

宇宙人、ほんとペットみたいです。人間って、ペットの前では素直になれますもの。

目がクリクリの宇宙人

さて、その宇宙人がどんな見た目かは映画で確認してほしいのですが、私はLOVOT(らぼっと)を思い出しました。

つまり、何も言わなくても、目が合うと会話した気分になったりします。

宇宙人は小柄で、性別があるなら女に近い体つき。中学生の体操選手らしい外見で、少女に見えますが、作中では一貫して “he” として扱われます。仮につけた名前「Jules」(ジュールズ)が原題にもなっていますが、なぜ男の子向けの名前にしたかは不明。

この宇宙人が不時着をしたので、どうにか無事に地球を飛び立ってほしいというところで、この80前後のおじいさん・おばあさんが奮闘するところが可愛い。「小粒の良作」と呼びたくなる一作です。

豪華キャストの静かなる演技

本作の主演、ベン・キングズレー。あの『ガンディー』はすでに1982年の作品で、キングスレー自身も父親がインド人です。1943年生まれのキングズレー、ゆうに80歳超えで立派な「おじいちゃん」です。

彼の無国籍感により、米国ペンシルバニアに住む独居老人を自然に演じていたところは、さすがでした。

ミルトンを気にかけていた同世代のサンディーを演じたハリエット・サンソム・ハリスは、3人の中では若く1955年生まれで、ブロードウェイ出身。映画出演は限られているものの、『リコリス・ピザ』に出ていたというから、個性的な脇役という感じですね。

そして猫飼いのジョイスを演じたジェーン・カーティンは1947年生まれ、「サタデー・ナイト・ライブ」出身のコメディエンヌ。日本では研ナオコさんのインパクトと黒柳徹子さんの知的さを合わせたみたいな存在。アメリカ人が見たら「あっ」と分かる役者さん。ですからまずこの3人が一つの作品に出た奇跡があると思ってみると、感慨深いですね。

宇宙人との遭遇という非日常を入口にしながら、描かれるのはむしろ「人生の終盤における日常」。静かで、優しくて、くすくす笑いたくなる。そんな映画でした。

猫が好きな人も、楽しめるかもしれません。

今日はこの辺で。

映画公式サイト:https://cominghome-movie.com

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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